ギルドを出て、さっそく教えて貰った宿屋に向かう。
「いらっしゃいませ」
中に入るとすぐにカウンターから女性の声が聞こえてきた。声の方に顔を向けると、そこには20代半ばほどの女性がいた。
「お食事でしょうか?それともご宿泊ですか?」
「宿泊でお願いします。とりあえず1週間分お願いできますか?」 「畏まりました。食事付きで1泊40リムとなりますがよろしいでしょうか?」リブネントより10リムほど高いが、町と村の差を考えればむしろ安い方だろう。1週間としたのは情報収集と、できれば大きい町で例の木彫り細工の売り先の当てを付けておきたかったからなのだが、この額なら問題なさそうだ。そう考えて宿屋の女性という点から必要としていそうなものを提示する。
「あぁ、この辺の商品を対価に取引したいのだがどうだろうか?」
「そうですね。ではこれらを対価として頂きますね」交渉も問題なく済み部屋へと案内される。
「こちらになります。何かご不明な点がありましたらいつでもお呼びください」
「ありがとうございます」女性が部屋から出て行った後、俺は部屋の中を改めて確認した。
部屋の広さは6畳ほどで、ベッドと机が置いてあるだけのシンプルな内装だった。しかし、掃除は行き届いており清潔感があった。 そして何より、2階にも関わらず窓からは街が一望できる見事な景観だった。街の東側には賑やかな商業区が広がっており、反対の西側には高級そうな建物が多く見える。恐らくは貴族街なのだろう。(・・・そういえば、ハロルドさんに他に細工物が好きな貴族が居ないか聞いてみるべきだったな。)
知っていれば既にハロルドさん自身が交渉しているだろうと思って考えから除外していたが、よく考えたら雑貨屋の店主の制限で当てがあっても手を広げられなかった可能性もある。明日会えるようなら聞いてみるか。
あとは、この町の市場や商店を回って商品の仕入れ先を見つけること。そして、できれば他の商人と仲良くなって情報交換をすることか。 まぁ、本格的に動くのは明日にして今日は食事をとって早めに休もう。 そう思い部屋を出て1階